Miqto
LICENSE本文を実取得して確認

「オープンソース」に見えて商用利用できないOSSカタログ

「GitHubでApacheって書いてあるから、商用でも自由に使える」——これで何度か足をすくわれました。
SPDXの表示も、GitHub APIのライセンス欄も、READMEも、LICENSE本文と食い違うことがあります。本文を最後まで読むまで、商用で使えるかは分かりません。
この記事は、私たちが候補評価で実際にぶつかった「オープンソースに見えて、商用利用や再販売に制限があるOSS」を、LICENSE本文を実取得してカタログにしたものです。すべて owner/repo のフルネームと原文つきです。

公開:2026-07-20読了:約14分確認時点:2026-07-20
先に前提
本記事は法的助言ではありません。各リポジトリのLICENSE本文を確認した記録です。ライセンスの解釈には争いがあり得ますし、条項は改定されます。実際の利用可否は、必ず最新の本文をご自身で確認し、必要なら専門家にご相談ください。「使ってはいけない」という趣旨ではなく、「表示だけで判断するな」という記事です。

01なぜこれを調べたか

私たちはオープンソースを改良して、日本語のマネージドサービスとして提供する事業を検討していました。当然、「そのOSSは、改変して商用SaaSにして再配布していいのか」が生命線です。

最初は、GitHubの表示やREADMEを見て「Apacheだから大丈夫」と判断していました。これが危なかった。表示と本文が食い違う例に、次々ぶつかったからです。1,332件のライセンスを全数調査したときにも、この食い違いが繰り返し出てきました。

先に、この記事の主張
4件GitHub APIがNOASSERTION本文に制限あり
1件正直にOSL-3.0表示でも用途は塞がる
本文読むまで分からない
結論を一言でいえば、「ライセンス欄の表示は入り口の看板にすぎない。契約書の本文を読め」ということです。

02NOASSERTIONは「本文を読め」の合図

調べていて気づいた、機械的に使えるシグナルがあります。GitHub APIが返す NOASSERTION(Other)という表示そのものが、警告になります。

これは「GitHubが、そのライセンスを標準ライセンスとして自動判定できなかった」という意味です。多くの場合、標準ライセンスに独自の追加条項が足されているために起こります。

GitHub API のライセンス表示(2026-07-20 実測)
リポジトリAPI表示本文の実態
langgenius/difyNOASSERTIONApache 2.0改変+マルチテナント禁止
open-webui/open-webuiNOASSERTIONBSD-3+ブランド変更制限
Budibase/budibaseNOASSERTIONGPLv3+同梱バイナリ再販禁止
opensourcepos/opensourceposNOASSERTIONMIT+フッター署名の保持義務
formio/formioOSL-3.0正直に表示。でもネットワーク条項あり
NOASSERTIONを見たら、READMEを閉じてLICENSE本文を開く。これだけで、多くの見落としを防げます。

03カタログ:本文に制限があったもの

それぞれ、LICENSE本文の該当箇所を原文で引きます。すべてデフォルトブランチの本文を実取得しました。

langgenius/dify ─ マルチテナント運用の禁止
Multi-tenant service: Unless explicitly authorized by Dify in writing, you may not use the Dify source code to operate a multi-tenant environment.
Tenant Definition: Within the context of Dify, one tenant corresponds to one workspace. langgenius/dify の LICENSE(Apache License 2.0 を改変し追加条件を付けたもの)
複数顧客を1つの環境に相乗りさせるマルチテナントSaaSは、書面での許諾がない限り不可。加えてコンソール/アプリのロゴ・著作権表示の削除・変更も禁止されています。書面で許諾を得れば解除は可能です。
open-webui/open-webui ─ 50ユーザー超でブランド変更禁止
licensees are strictly prohibited from altering, removing, obscuring, or replacing any "Open WebUI" branding ... except in the following circumstances: (i) ... does not exceed fifty (50) within any rolling thirty (30) day period; (ii) ... specific prior written permission ...; or (iii) ... a duly executed enterprise license ... open-webui/open-webui の LICENSE(現行 Clause 4)
50ユーザー/ローリング30日を超えると、ブランド表示を変えられません。⚠️陳腐化に注意:かつてあった「本体にコードをマージした貢献者は免除」という条項は 2026年4月14日(commit 26a645f)に削除済みです。現在の免除は①50人以下 ②書面許諾 ③エンタープライズ契約の3つだけ。これを書いている日本語記事は既に古い可能性があります。
Budibase/budibase ─ 同梱バイナリの再販・移転の禁止
right and title to utilise the ... Structured Query Server software product (Product) for its own internal business purposes (the Purpose) only ... The Licence shall not permit sub-licensing, resale or transfer of the Product to third parties ... Budibase/budibase の SQS_LICENSE
全体はGPLv3ですが、SQS(Structured Query Server)は例外です。しかもこれはnpmの依存ではなく、budibase/couchdb Dockerイメージにビルド時に組み込まれる専有バイナリ/opt/sqs/sqs)。「依存ツリーに紛れている」のではなく、公式イメージに同梱されています。第三者への再販・移転を伴うホスティング提供の権利がありません。
opensourcepos/opensourcepos ─ フッター署名の保持義務
The footer signatures with version, hash and URL link to the official website of the project MUST BE RETAINED, MUST BE VISIBLE IN EVERY PAGE and CANNOT BE MODIFIED. opensourcepos/opensourcepos の LICENSE(1行目は "MIT License" だが追加条項あり)
1行目に "MIT License" と書いてありますが、OSI版のMITではありません。全ページにプロジェクトのフッター署名を表示し続ける義務があり、ホワイトラベル(自社ブランドでの提供)ができません。「著作権や所有権を主張してはならない」条項もあります。
carboneio/carbone ─ 独自ライセンスで用途を限定
as long as you are not offering Carbone Community Edition Software as a hosted Document-Generator-as-a-Service like Carbone Cloud, you can use all Community features for free. carboneio/carbone の LICENSE.md(Carbone Community License Agreement・2023-02-14)
標準ライセンスではなく独自の「Carbone Community License Agreement」。ホスト型の文書生成サービスとして提供しない限り無料=まさに私たちのようなSaaS提供が禁止対象です。GitHub API表示はNOASSERTION。
martinezsalmeron/dentalpin ─ 業種を名指しで禁止(BUSL)
Use Limitation: You may not use the Licensed Work for providing a commercial Software-as-a-Service (SaaS) offering for dental clinic management where the primary value is substantially derived from the Licensed Work. martinezsalmeron/dentalpin の LICENSE(Business Source License 1.1)
BUSLで、「歯科クリニック管理の商用SaaS提供」を名指しで禁止。見出しは非標準の「Use Limitation:」です(BUSL標準の "Additional Use Grant" とは別物)。変更ライセンスはApache 2.0、変更日は公開から4年後。

04正直に表示していても塞がれる例(Formio)

ここまではNOASSERTIONの話でした。逆に、正直に標準ライセンス名を表示していても、用途が塞がれる例があります。formio/formio です。

formio/formio ─ OSL-3.0 のネットワーク条項
The term "External Deployment" means the use ... of the Original Work ... such that ... may be used by anyone other than You ... or made available as an application intended for use over a network. ... You must treat any External Deployment ... as a distribution under section 1(c). formio/formio の LICENSE.txt(OSL-3.0 §5 External Deployment)
GitHub APIは正直に OSL-3.0 と表示します。ところがOSL-3.0には、ネットワーク越しの提供を「頒布」とみなす条項(§5→§1(c))があり、SaaSにするとコピーレフト義務が発動します。OSI承認のオープンソースライセンスなのに、ネットワーク条項で用途が塞がれるという別種の罠です。
2種類の罠
NOASSERTION型は「表示が当てにならない」罠。Formio型は「表示は正しいのに中身で塞がれる」罠。
どちらも、ライセンス名を見ただけでは避けられません。本文の条項を読むしかない。

05名前が同じで、中身が逆の例

もう一つ、怖いのがリポジトリ名の衝突です。同じ名前で、ライセンスが真逆のリポジトリが存在します。owner名まで確認しないと、主張が逆になります。

同名・別物の例(2026-07-20 実測)
こちらは全権利留保

tngoman/Store-POS

LICENSEファイルが存在しない

=著作権法上、全権利留保。無断で商用利用できない

こちらはMIT

inforkgodara/store-pos

MIT License

=自由に使える。まったく別のプロジェクト

「Store-POS は使える」と書くと、どちらを指すかで正誤が逆転します。carlosribas/medvet も同様にLICENSEファイルが存在せず、全権利留保です。必ず owner/repo で特定してください。

06確認の手順

ここまでの失敗から、私たちが必ず通すようにした手順です。

ライセンス確認の手順
  1. owner/repo でリポジトリを特定する同名の別物を疑う。star数やフォーク元も見る
  2. デフォルトブランチのLICENSE本文をrawで開くファイル名は LICENSE とは限らない(LICENSE.txt / LICENSE.md のことも)。ブランチで内容が違う場合もある
  3. 標準ライセンス名の「後ろ」を読む"MIT License" や "Apache" の後に追加条項が続いていないか。マルチテナント・ネットワーク提供・ブランド表示の制限を探す
  4. 同梱物・依存の個別ライセンスを見る本体はGPLでも、同梱バイナリだけ別ライセンスのことがある(Budibaseの例)
  5. NOASSERTIONは赤信号として扱う標準判定できない=追加条項の可能性。本文を最後まで読む
この5ステップは、慣れれば1リポジトリ数分です。この数分を惜しむと、事業の土台が後で崩れます。
一点、正直に(OpenRemoteについて)
当初、openremote/openremote を「AGPL+商用のデュアルライセンス」の例として挙げるつもりでした。ですがLICENSE本文(LICENSE.txt・全2,697行の連結ファイル)にもREADMEにも、デュアルライセンスの記載は見つかりませんでした。本文にあるのは自社コードのAGPLv3通知+同梱third-partyの一覧です。裏が取れないので、「AGPL+商用デュアル」とは書きません。これも「本文を読め」の一例です。
この調査は、私たちがオープンソースを日本語のマネージドサービスとして提供する(Miqto)ための候補評価の過程で行ったものです。あわせて読む:セルフホストOSS 1,332件のライセンスを全数調査したAGPLのOSSをSaaSで提供できるのかOSSを評価する11段のゲートOSSライセンス変更の年表OSS候補の探し方を間違えていた話

データ・出典(すべてLICENSE本文を実取得・2026-07-20)

  1. langgenius/dify の LICENSE(マルチテナント禁止・ロゴ削除禁止)
  2. open-webui/open-webui の LICENSE(50ユーザー/30日・貢献者免除は2026-04-14に削除)
  3. Budibase/budibase の SQS_LICENSE(内部利用のみ・再販/移転/サブライセンス禁止。budibase/couchdbイメージに同梱の専有バイナリ)
  4. opensourcepos/opensourcepos の LICENSE(フッター署名の保持義務)
  5. carboneio/carbone の LICENSE.md(Carbone Community License・ホスト型提供は有償)
  6. martinezsalmeron/dentalpin の LICENSE(BUSL・歯科向けSaaS提供を禁止)
  7. formio/formio の LICENSE.txt(OSL-3.0 §5 External Deployment)
  8. 名前衝突:tngoman/Store-POS(LICENSE無し)/inforkgodara/store-pos(MIT)/carlosribas/medvet(LICENSE無し)
  9. 将来Apacheになる例:emoss08/Trenova の LICENSE(デフォルトブランチ master は FSL-1.1-ALv2=公開2年後にApache 2.0。※mainブランチは別内容のBUSLになっており、ブランチで異なる点に注意)
本記事は法的助言ではなく、各リポジトリのLICENSE本文を確認した記録です。内容は2026年7月20日時点でデフォルトブランチの本文から確認したもので、条項は改定され得ます(実際、Open WebUIの貢献者免除は削除されました)。ライセンスの解釈には争いがあり得ます。特定のプロジェクトを非難する意図はなく、各プロジェクトが自らの意思でライセンスを選んでいること自体は正当です。本記事の要点は「表示ではなく本文を読め」という一点に尽きます。実際の利用可否は最新の本文を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。