Miqto
ベンダー公式価格の確認

日本のIDaaS価格を全部調べた ─ Entra ID同梱という罠

IDaaS(シングルサインオン・ID管理のクラウド)の価格を、各社の公式サイトで全部調べました。月300円から2,000円まで、幅があります。
でも、価格表を作っている途中で気づきました。多くの企業は、この価格表を見る前に、すでにSSOを持っています。Microsoft Entra ID P1は、Microsoft 365 E3・E5・Business Premiumに、別途購入不要で含まれているからです。
つまり、IDaaSの価格競争の一番外側に、「もう持ってるよ」という無風地帯があります。これが同梱の罠です。

公開:2026-07-20読了:約12分確認時点:2026-07-20

01なぜこれを調べたか

ID管理・シングルサインオンは、オープンソースにも Keycloak という有力な選択肢があります。私たちは「Keycloakを日本語マネージドで提供できないか」を検討する中で、まず日本のIDaaS市場の価格を把握しようとしました。

ところが、価格を集めるほど、「価格以前の勝負がついている」構造が見えてきました。そして、巷の比較記事の価格が軒並み古いことにも気づきました。だから、全部を公式で取り直しました。

先に結論を数字で
同梱Entra ID P1はM365に含まれる別途購入不要
300〜2,020独立系IDaaSの月額レンジ
303.5市場規模2024年度・前年比+23.9%
伸びている市場ですが、買い手の多くは比較表を見る前にSSOを持っています。ここが同梱の罠です。

02Entra ID同梱という罠

いちばん重要な事実から書きます。Microsoft Entra ID P1は、Microsoft 365の主要プランに含まれています。Microsoftの公式ライセンスページに明記されています。

Entra ID がどこに含まれるか(Microsoft公式)
P1
Microsoft 365 E3 / E5 / E7、F1 / F3、Business Premium に含まれる(=別途購入不要)
P2
Microsoft 365 E5 / E7、および Business Premium 向けの Defender / Purview スイート経由で含まれる場合がある
スタンドアロン価格
P1 = 月額1,049円相当、P2 = 1,499円相当(いずれも年払い・税抜表記)
Microsoft Learn のライセンスページで確認(更新日 2026-06-18)。公式の文言は「含まれています(included)」で、「追加費用なし」という語は使われていないため、本記事では「別途購入不要で含まれる」と表現しています。
これが罠の正体
Microsoft 365 Business Premium を使っている中小企業は、SSOの基盤(Entra ID P1)を既に持っています。
外部のIDaaSを月300円で売り込んでも、相手は「それ、もう入ってるよ」という状態から始まる。価格表に載る前に、勝負がついていることがあります。

03価格を全部並べた

それでも、各社は明確に事業として成立しています。Entraにない機能(きめ細かいSaaS連携・デバイス制御・日本語サポート・国産の安心感)で差別化しているからです。公式サイトで確認した現行価格を並べます。

日本のIDaaS 主要プランの価格(すべて公式・確認時点2026-07-20)
サービスプラン月額/ID税/条件
GMOトラスト・ログインSaaS管理290円税抜・最低30名・12か月
SSOプロ300円
HENNGE OneIdP300円税抜・最小200ID
IdP Pro500円
CloudGate UNOStandard Plus400円(税込440円)税抜税込併記
Enterprise Plus500円(税込550円)
Smart Pack600円(税込660円)
OktaStarter940円年契約・年間最低24万円
Core Essentials2,020円
Microsoft Entra IDP11,049円相当年払い・税表記なし・M365に同梱
P21,499円相当
GMOの「290円」はSaaS管理プランで、SSO/IDaaSとして横並べするなら「300円(SSOプロ)」です。CloudGateのプラン名は現行の「Standard Plus / Enterprise Plus」を使っています(旧「Standard / Enterprise」ではありません)。

04単価を横並びにしてはいけない

上の表を作って痛感したのは、「単価◯円」だけを抜き出して比べると、必ず誤解が生まれるということです。条件が全社バラバラだからです。

比較を歪める3つの条件
  1. 税基準が揃っていないGMO・HENNGEは税抜、CloudGateは税抜税込を併記、Okta・Microsoftは税表記なし。同じ「500円」でも中身が違う
  2. 最低契約条件があるHENNGEは最小200ID、GMOは最低30名・12か月、Oktaは年契約・年間最低24万円(=実質22ユーザー以上でないと割高)
  3. そもそもEntraを持っているMicrosoft 365利用企業は、比較の前に選択肢を1つ持っている
単価を横並びにするなら、税基準と最低契約条件を必ず同じ列に入れること。これを落とした比較表は、安く見えるものを実際より安く見せます。
Keycloakを自前で建てる場合
オープンソースのKeycloakを使う道もありますが、構築を外注すると「標準的な構成で260万〜480万円が目安」という事業者もあります(デージーネットの公表目安)。日立はKeycloakのメンテナを社員に持ち(2021年就任)、国内でも上流に関与する例があります。NRI OpenStandia・かもめエンジニアリングはKeycloak関連の公開価格が見当たらず、個別見積のようです。

05市場規模と、シェアの読み方

市場は伸びています。ただし、シェアの数字には読み方の注意があります。

IDaaS市場規模(ITR)
303.5億円2024年度確定値
+23.9%前年度比
9.5%今後のCAGR予測2024→2029年度
出典=ITR。2025年度の確定額は未公表で、「2桁増を維持する見込み」という予測のみです。「最新=303.5億円(2024年度)」として使うのが正確です。
「5年連続シェア1位」の出所
HENNGEが「HENNGE One がIDaaS市場のベンダー別売上金額シェアで2021年度から5年連続1位」と発表していますが、これはITRのデータに基づくHENNGE社の発表で、2025年度は「予測」時点の順位です。ITR自身がベンダー名を公表しているわけではありません。「市場規模」は実績値、「シェア順位」は予測値と、性質が違う点に注意が必要です。

06結論

Keycloakを日本語マネージドで、という発想への答え
IDaaSは伸びている市場ですが、買い手の多くはMicrosoft 365経由でEntra IDを既に持っています。
そこへオープンソースのKeycloakをマネージドで持ち込むと、「無料で持っているもの」と「自前で建てれば数百万」の間で、独立系IDaaSがひしめく激戦区に、後発で入ることになります。私たちの評価では、勝ち筋が細い領域でした。
この調査は、私たちがオープンソースを日本語のマネージドサービスとして提供する(Miqto)ための候補評価の過程で行ったものです。あわせて読む:OSSを評価する11段のゲート社内AIの原価を計算したセルフホストOSS 1,332件のライセンスを全数調査した

データ・出典

  1. Microsoft Learn「Microsoft Entra ライセンス」(P1がE3/E5/Business Premiumに含まれる旨・更新日2026-06-18)/Entra のプランと価格(P1 1,049円・P2 1,499円・年払い)
  2. GMOトラスト・ログイン 料金(SaaS管理290円・SSOプロ300円・税抜・最低30名・12か月契約)
  3. HENNGE One 価格(IdP 300円・IdP Pro 500円・税抜・最小200ID)/シェア1位に関するプレスリリース(ITRのデータに基づくHENNGE社発表・2025年度は予測)
  4. CloudGate UNO 料金(Standard Plus 400円/税込440円・Enterprise Plus 500円/550円・Smart Pack 600円/660円)
  5. Okta プランと価格(Starter 940円・Core Essentials 2,020円・年契約・年間最低24万円)
  6. ITR「IDaaS市場規模推移および予測」(2026-04-14)(2024年度303.5億円・前年比+23.9%・CAGR 9.5%予測。2025年度の確定額は未公表)
  7. デージーネット「Keycloak」(構築費用の目安260万〜480万円)/日立製作所:社員がKeycloakメンテナに就任(2021-10)
本記事は特定のIDaaS製品の推奨・非推奨を目的としたものではありません。各社の価格・プラン・条件は2026年7月20日時点で公式サイトに掲載されていた内容に基づき、変更され得ます。税抜・税込の別、最低契約ID数、契約期間は各社で異なるため、単価のみの比較は避けてください。Entra ID P1がMicrosoft 365各プランに含まれる範囲や条件はMicrosoftの規定に従い、エディションにより異なります。NRI OpenStandia・かもめエンジニアリングのKeycloak関連費用は、公開価格が確認できなかったため個別見積と理解しています。会社名・製品名は各社の商標です。