01動機は一貫している
結論から書きます。これらのライセンス変更は、バラバラに起きているように見えて、動機は一つでした。MongoDB自身が、いちばん率直に書いています。
we have observed organizations, especially the international cloud vendors begin to test the boundaries of the AGPL license. ... Rather than litigating this issue in the courts, we are issuing a new license to eliminate any confusion about the specific conditions of offering a publicly available MongoDB as a service. MongoDB SSPL FAQ(2018年、AGPL→SSPL)
だから SSPL(MongoDB)や BUSL(HashiCorp)といった、より強い・より広い条項へ進化しました。「オープンでなくなった」の正体は、多くの場合このフリーライド対策の強化です。悪意というより、一貫した経営判断でした。
02主要な変更の年表
一次ソース(各社の公式ブログ・プレスリリース・LICENSE本文)で確認した日付とライセンスです。「置換」か「追加」かも明記します。
03置換・追加・forkを区別する
年表を読むうえで、いちばん間違えやすいのが「置換」と「追加」の区別です。ここを取り違えると、そのソフトがOSI承認のオープンソースかどうかの判定まで変わります。
04対抗fork ─ 元のライセンスを守る動き
制限的な変更が起きると、多くの場合「変更前のバージョンから分岐して、元のライセンスで続ける」対抗forkが生まれます。利用者にとっては重要な逃げ道です。
Redis → BSD-3をやめRSALv2/SSPLへ(2024-03)
Terraform(HashiCorp) → BUSLへ(2023-08)
Valkey → BSD-3のまま(2024-03-28)
OpenTofu → MPL-2.0のまま(2023-09)
05利用者側の防御策
では、これらのソフトを使う側は何をすべきか。私たちが実践している3点です。
- バージョンを固定し、どの版がどのライセンスか把握する多くの変更は将来リリースにのみ適用され、変更前のバージョンは元のライセンスのまま。「いつのリリースから変わったか」を必ず記録する
- 移行計画と対抗forkの動向を持つValkey・OpenTofu・Forgejoのような選択肢を把握しておく。本家が閉じてから慌てない
- 依存の棚卸しをする自分のプロダクトの依存ツリーに、ネットワーク条項の強いライセンスが紛れていないか。表示ではなく本文を読む
06断定しなかったこと
この記事を書くにあたって、一次ソースが取れず、あえて書かなかったことがあります。年表の信頼性は、載せた情報だけでなく「載せなかった判断」で決まると考えています。
データ・出典(各社公式・一次ソース)
- MongoDB SSPL FAQ(2018-10-16・AGPL→SSPL・変更理由)
- Grafana Labs:AGPLv3への再ライセンス(本文は2021-04-20)/ToolJet:GPLv3→AGPLv3(2021-09-28)
- HashiCorp:BUSL採用(2023-08-10)/Licensing FAQ(API/SDKはMPL維持)
- Redis:AGPLv3を追加(2025-05-01・三重)/Elastic:AGPLを追加(2024-08-29・「置換ではない」)
- Zitadel:AGPL 3.0へ(v3.0=2025-03-31)/Cal.com:cal.diy(MIT)へ改名・本番非公開化(2026-04)
- 対抗fork:Valkey(2024-03-28・BSD-3維持)/OpenTofu(2023-09・MPL-2.0維持)/Forgejo(v9.0〜段階的にGPLv3+)
- その他:Sentry:FSL策定(2023-11)/n8n:Sustainable Use License(2022-03-17)/Akka:BUSL(2022-09-07)/Sourcegraph:Apache→独自(2023-06)→コアリポ非公開化(2024-08、コミュニティ観測)