Miqto
一次情報の確認 + 市場構造の分析

Redmineが日本で強い理由と、その市場構造

Redmineは、世界的に見ればJiraに押されて久しいプロジェクト管理ツールです。ところが日本では、いまも現役で強い。なぜでしょうか。
市場構造を一次情報で調べたら、答えは「本体を作っている会社が、日本語の情報も、商用ホスティングも、垂直統合していた」ことに行き着きました。Redmine本体のコミッターが、そのままマネージド事業者の代表取締役です。
My Redmineは月11,000円で1,000ユーザー——実質1人あたり11円。この価格が成立する理由も、構造を見ると分かります。

公開:2026-07-20読了:約12分確認時点:2026-07-20

01なぜこれを調べたか

私たちはオープンソースを日本語のマネージドサービスにする事業を探していました。その中でRedmineは「成功例」として何度も名前が挙がります。My Redmineは1,700社以上に使われ、明らかに成立している。

「同じことを別のOSSでやればいい」——最初はそう考えました。でも、Redmineの市場構造をよく見ると、そう簡単に真似できるものではありませんでした。成功の理由が、製品の良さではなく市場のポジションの取り方にあったからです。その構造を分解します。

先に、この記事の要点を数字で
1,700社+My Redmineの導入実績
¥11相当1ユーザーあたり月額スタンダードをフル利用時
4役1社が担うもの本体開発・情報・独自版・商用
世界ではJiraに押されているRedmineが、日本では現役で強い。その理由が、この3つの数字に表れています。

02本体・情報・ホスティングが1社に集約されている

いちばん驚いたのはここです。Redmine本体を開発しているコミッターが、日本語マネージドを提供する会社の代表取締役でした。

ファーエンドテクノロジー1社に集まっているもの
本体開発代表がRedmineコミッター2017年11月〜
日本語情報Redmine.JP を運営同社のオウンドメディア
独自版RedMica を維持下流ディストリビューション
商用My Redmine を提供1,700社以上
前田剛(Go MAEDA)氏は、ファーエンドテクノロジー代表取締役(2008年〜)であり、Redmine本体のコミッター(2017年11月〜)です。開発・情報・商用が、同じ主体に集まっています。

この4つが1社に揃っていることの意味は大きいです。本体の方向性を知り、日本語で情報を発信し、その情報で流入を集め、ホスティングで受け止める。これが一つの会社の中で完結しています。

RedMica とは
ファーエンドが維持するRedmineの下流ディストリビューション(独立フォークではない)。「まだ正式リリースされていない新機能を早く届ける」目的で、GPLv2・2019年11月に公開。本体のtrunkを取り込み続けている
Redmine.JP とは
同社が運営する日本語の情報サイト。フッターの著作権表示も同社。中立のコミュニティサイトではなく、事業者のオウンドメディア
ここが核心
ライセンスはオープンなので、Redmine自体は誰でもホスティングできます。
でも、本体の開発力・日本語情報の蓄積・「Redmine=あの会社」という認知は、ソースコードには含まれていません。垂直統合そのものが堀になっていました。

03プレイヤーと価格を並べた

日本のRedmine関連市場の主なプレイヤーを、価格とともに並べます。すべて各社の公式サイトで確認した現行値です(確認時点2026-07-20)。

主なプレイヤーと価格
サービス提供元価格(税込・公式)課金の軸
My Redmineファーエンド11,000〜44,000円/月容量(ユーザー数定額)
Lychee Redmineアジャイルウェア900〜2,100円/ユーザー + クラウド利用料5,000円/月ユーザー数
PlanioPlanio GmbH(独)ドイツ本社と直接契約プラン別
Backlogヌーラボ(別系統の国産ツール)プラン別
BacklogはRedmineではありませんが、日本のプロジェクト管理市場での主要な競合として並べています。

My Redmineの価格設計が独特です。ユーザー数で課金せず、容量で段階を分けています。

My Redmine の料金(公式・税込)
¥11,000スタンダード1,000ユーザー / 200GB
¥15,400ミディアム1,000ユーザー / 400GB
¥30,800エンタープライズ2,000ユーザー / 800GB
¥44,000エンタープライズ1.5TB2,000ユーザー / 1.5TB
スタンダードは1,000ユーザーまで定額。フルに使えば1ユーザーあたり実質11円という水準です。ユーザーを増やしても値段が上がらないのは、買い手にとって非常に安心感があります。(URLは /service//price/ は現在404です。)

一方のLychee Redmineは、ガントチャートやかんばんを強化した製品で、ユーザー単位の課金です。2026年7月1日からは、プラン料金に加えてクラウド利用料が別途月5,000円かかるようになりました。無料プランもありますが、ガントチャートは含まれず、チケット5,000件・2GBの制限があります。提供元のアジャイルウェアは、テクマトリックスと2017年に販売パートナー契約を結び、販路を広げています。

04なぜ日本の受託文化に刺さったか

価格や垂直統合だけでは、ここまでの定着は説明しきれません。もう一つ、製品設計と日本の開発文化の相性があります。

Redmineの設計が刺さった理由(構造の観察)
  1. 複数プロジェクトを横断で管理できる1つのRedmineで多数の案件を並行管理できる。同時に多くのクライアント案件を回すSI・受託開発の実務に合った。
  2. チケット駆動が「報告・進捗」の文化に合った課題をチケットで起票し、状態を追う運用が、日本の細かな進捗管理の習慣となじんだ。
  3. 日本語の情報が最初から厚かった導入で困ったときに、日本語の解説が大量にあった。これが次の採用を呼ぶ好循環を作った。
①②は製品設計の話、③は市場のポジションの話です。この2つが噛み合ったのがRedmineの強さでした。
補足:移行スクリプトについて
Redmineには TracやMantis からの移行スクリプトが同梱されていますが、現在は廃止予定(deprecate)として警告を表示する状態になっています(Redmine本体のPatch #43918、バージョン7.0.0で削除予定)。「同梱されている」のは事実ですが、そのまま実用できる移行ツールとして当てにはできません。正確に伝えるために添えておきます。

05コミュニティが「会社のもの」ではない

もう一つ、見落としやすい構造があります。日本語の情報源が、1社に集中していないことです。垂直統合の話と一見矛盾しますが、両立しています。

日本語の情報源は、主体が分かれている
情報源運営主体性質
Redmine.JPファーエンドテクノロジー事業者のオウンドメディア(著作権表示も同社)
Redmine.tokyo有志のコミュニティ関東中心の勉強会。企業公式ではない
redmine-users-jaGoogle Groups日本語ユーザーのメーリングリスト
よく見かける「redmine-users.jp」というドメインは現在は存在しません(DNSが解決しません)。実体は上記のGoogle Groupsです。
これが効いている
事業者が情報発信をリードしつつ、コミュニティ全体は特定企業の所有物ではない。
だから、一社が事業判断を変えても、Redmineというエコシステム全体は死にません。企業が丸ごと所有しているOSSは、その企業の都合で終わり得ます。Redmineはそうなっていません。

06この構造から学べること

私たちが「Redmineを真似よう」として気づいたのは、真似すべきは製品ではなく、順序と構造だったということです。

Redmineの市場構造から取り出せる教訓
真似できないもの

本体のコミッターであること

18年分の日本語情報の蓄積

「Redmine=あの会社」という認知

学べるもの

情報を先に積んでから売る順序

ユーザー数でなく容量で課金する安心感

コミュニティを囲い込まない設計

左側は模倣不可能です。右側は、別のOSSでも再現できるかもしれない要素です。

とくに大きいのは「情報が先」という順序です。Redmine.JPが情報を出し始めたのは、商用ホスティングの提供よりも前でした。製品を出してから情報を作るのではなく、情報を積んでから製品を出す。この順序は、私たちが日本でOSSマネージドが成立した事業者を調べたときにも、共通して見えた構造でした。

この分析は、私たちがオープンソースを日本語のマネージドサービスとして提供する(Miqto)ために市場構造を調べる中で行ったものです。あわせて読む:日本でOSSマネージドが成立した事業者を全部調べたOSSを評価する11段のゲート日本人が実際に使っているOSSを実測した

データ・出典

  1. ファーエンドテクノロジー 沿革(前田剛氏が2017年11月25日にRedmineコミッターとなった旨)/代表者略歴(2008年9月設立・代表取締役就任)
  2. redmica/redmica(GitHub) ※「yet another distribution of Redmine」・Maintainer=Far End Technologies・GPLv2/RedMica 1.0.0 公開のお知らせ(2019年11月)
  3. My Redmine サービス・料金(スタンダード〜エンタープライズ1.5TBの4プラン・税込)
  4. Lychee Redmine 料金プラン(900〜2,100円/ユーザー・最低10ユーザー・クラウド利用料5,000円/月を2026年7月1日から適用・無料プランの制限)
  5. アジャイルウェア 会社概要(設立2012年6月1日・従業員59名〈2026年4月〉・売上13億9千万円〈2025年度〉)/テクマトリックスとの販売パートナー契約(2017年4月19日)
  6. Redmine.JP(ファーエンドのオウンドメディア・著作権表示は同社)/Redmine.tokyo(有志コミュニティ)/redmine-users-ja(Google Groups)
  7. Redmine 本体の Trac 移行スクリプトPatch #43918(移行スクリプトの廃止予定・7.0.0で削除予定)
  8. Backlog(ヌーラボ)の有料利用者数・有料契約件数は、同社の決算説明資料およびプレスリリースに基づきます。「143万人」という数値はWikipediaのBacklog記事の無出典記述で、公式の現行値ではありません(公式は有料利用者150万人以上/2026年3月末時点)。ヌーラボ プレスリリース(有料契約15,000件突破・2025年9月末時点)
本記事は特定サービスの推奨・非推奨を目的としたものではありません。各社の価格・プラン・数値は2026年7月20日時点で公式サイト等に掲載されていた内容に基づき、変更され得ます。Backlogの有料利用者数(150万人以上)は同社決算説明資料に基づく数値ですが、一次PDF本文の逐語確認までは行っていないため、正確な時点・定義は原資料をご確認ください。ファーエンドテクノロジーとPlanio GmbHの関係は、ファーエンドがPlanio認定パートナーとして日本語サポートを担い、契約はPlanioと直接結ぶ形と理解していますが、契約仲介の有無に関する各社の正確な表現は原文をご確認ください。会社名・製品名は各社の商標です。