01どう数えたか(再現手順)
国税庁のJIIMA認証情報リストは、区分ごとにJIIMAのページへリンクしているだけで、件数は書かれていません。JIIMA側も区分別の一覧を出しており、確認できた範囲では横断集計は見当たりませんでした。
そこで、JIIMAの認証制度ページから辿れる5つの認証製品一覧をすべて取得し、行を機械的に数えました。
- 取得対象:認証製品一覧5ページ(スキャナ保存/電子帳簿/電子取引/電子書類/デジタルシームレス)。取得は5リクエストのみ・3秒間隔。
robots.txtで/certification/が禁止されていないことを事前に確認しています - 行の取り出し:
<table>単位ではなく<tr>をページ全体から拾います。1ページに表が複数あり、しかも入れ子になっているため、表単位で切ると取りこぼします(後述) - データ行の判定:セルの中に認証番号(
600100-00の形式)が単独で入っている位置を探し、そこから次の認証番号の手前までを1レコードとします。<thead>が閉じられておらず見出し行と1行目が1つの<tr>に融合しているため、この方法でないと各表の先頭行が落ちます - 他区分の参照番号を除く:デジタルシームレスの各行には「電子取引認証番号」列があり、他区分の番号が同じ行に入っています。認証番号の系列(先頭2桁)がその区分のものかで判定し、参照番号ではレコードを作りません
- 主製品/派生製品:区分によって表記が違います(「派生製品」と「・派生-1」)。文字列に「派生」を含むかどうかで判定
- 事業者名の正規化:全角英数を半角に統一(NFKC)し、空白と「(旧…)」を除去。これをしないと同じ会社が二重に数えられます
- 製品の重複除去:製品名(NFKC正規化)とメーカー名の組で一意化。括弧の中身は落としません(落とすと別製品が潰れます。後述)
- ⭐検算:抽出した行数が、生HTMLの中で「セルとして認証番号そのものになっている」箇所の数と一致するかを区分ごとに突き合わせます。これが今回の要です。
| 区分 | 生HTMLの認証番号セル | うち自区分の系列 | 抽出行数 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 電帳法スキャナ保存ソフト | 251 | 251 | 251 | 一致 |
| 電子帳簿ソフト | 171 | 171 | 171 | 一致 |
| 電子取引ソフト | 325 | 325 | 325 | 一致 |
| 電子書類ソフト | 114 | 114 | 114 | 一致 |
| デジタルシームレスソフト | 72 | 36 | 36 | 一致 |
認証番号の重複は0件、有効期限が取れなかった行も0件でした。
02のべ897件の内訳
5区分を合計すると897件でした。
| 認証区分 | 件数 | 主製品 | 派生製品 | 派生の比率 |
|---|---|---|---|---|
| 電子取引ソフト | 325 | 256 | 69 | 21.2% |
| 電帳法スキャナ保存ソフト | 251 | 191 | 60 | 23.9% |
| 電子帳簿ソフト | 171 | 95 | 76 | 44.4% |
| 電子書類ソフト | 114 | 72 | 42 | 36.8% |
| デジタルシームレスソフト | 36 | 3 | 33 | 91.7% |
| 合計 | 897 | 617 | 280 | 31.2% |
派生製品の比率が区分によって21.2%〜91.7%とまるで違います。この差が、次に見る「件数≠製品数」の正体です。
03「897」は製品数ではない
ここが本記事で一番言いたいところです。897という数字を「認証されたソフトが897本ある」と読むと、実態を大きく取り違えます。
減らす要因が2つあります。
1つの製品が複数の区分で認証を取るのは珍しくありません。412製品のうち143製品(34.7%)が2区分以上を持っていました。
| 区分数 | 製品 | 提供事業者 |
|---|---|---|
| 5 | DataDelivery | JFEシステムズ株式会社 |
| 5 | FX2クラウド | 株式会社TKC |
| 4 | 快速サーチャーGX | TISI株式会社 |
| 4 | Paples | 日鉄日立システムソリューションズ株式会社 |
| 4 | 戦略情報会計システム OPEN21 SIAS | 株式会社ICSパートナーズ |
| 4 | 勘定奉行クラウド | 株式会社オービックビジネスコンサルタント |
| 4 | マネーフォワード クラウド会計Plus | 株式会社マネーフォワード |
3区分を持つ主製品は30件です(ArcSuite・DocuShare・インボイス・マネジャー・ReportFiling・OBIC7 など)。
04259社。ただし1社で17.9%
事業者名を正規化すると259社でした。正規化前の表記は284種類あったので、25件は表記ゆれです。最大のものは「株式会社TKC」と「株式会社TKC」で、半角と全角の違いだけで別会社として数えられていました(125件と36件)。
ただしTKCの161件は「161製品を出している」という意味ではありません。内訳を見ると、主製品は11件で、残る150件は派生製品でした。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 電帳法スキャナ保存ソフト | 36 |
| 電子取引ソフト | 35 |
| デジタルシームレスソフト | 35 |
| 電子帳簿ソフト | 29 |
| 電子書類ソフト | 26 |
| 計(主製品11/派生製品150) | 161 |
つまり、少数の主製品に対して多数の派生版を個別に登録している形です。これは制度の使い方として正当ですが、件数をそのまま「シェア」と読むと実態から外れます。
05区分ごとの性格が違う
件数だけでなく、中身の構成が区分ごとに大きく違います。とくに極端なのがデジタルシームレスです。
- 主製品は3件だけ
- 株式会社TKC「FX2クラウド」
- 株式会社TKC「インボイス・マネジャー」
- JFEシステムズ株式会社「DataDelivery」
- 派生33件はすべてTKC
- =実質2社・3製品の区分
- 主製品256件
- 5区分で最も件数が多い
- 全体の36.2%
- 幅広い事業者が参入している
この区分の一覧には「電子取引認証番号」という列があり、各行が電子取引ソフト認証の番号を参照しています。デジタルシームレス認証は、電子取引認証の上に積む形になっているようです。
06期限切れが残っている、と誤解しかけた
有効期限の欄を集計したとき、2026年9月3日の時点ですでに期限日を過ぎているものが21件ありました。最も古いのは2025年10月5日(Great Sign/株式会社TREASURY)です。
一瞬「期限切れの製品が一覧に残っている」と書きかけました。間違いでした。
「認証有効期限欄に★が表示されているソフトにつきましては、更新審査の申請がなされており、認証有効期限以降も認証ソフトとして有効な製品です。」
改めて数え直すと、期限日を過ぎている21件は、すべて★付きでした。そして★が付いているのに期限内、という食い違いも0件。つまり★なしで期限切れの製品は1件もなく、一覧は完全に整合していました。
074回間違えた話
この記事は一度、まったく違う数字で書き上がっていました。のべ676件・実質344製品・事業者235社。全部間違いです。公開前の検証で気づいて、集計をやり直しました。
間違いの中身と、なぜ気づけなかったかを書きます。
| # | 何を間違えたか | どう気づいたか |
|---|---|---|
| 1 | 製品名の括弧を一括削除していたため、「あんしんエビデンス管理(OnBase)/(Box)/(SharePoint Online)」という別々の3製品を1つに潰していた | 集計結果に「9区分で認証」という値が出た。区分は5つしかないので、ありえない。すぐ分かった |
| 2 | ページの表を <table>…</table> で切り出していた。JIIMAのページは表が入れ子になっているため非貪欲マッチが破綻し、1ページあたり最大144行を落としていた |
🔴気づけなかった。下記参照 |
| 3 | <thead> が閉じられていないため見出し行と1行目が同じ <tr> に融合しており、5ページすべてで先頭の1行が落ちていた(BtoBプラットフォーム 請求書など) |
🔴気づけなかった。下記参照 |
| 4 | デジタルシームレスの行にある「電子取引認証番号」を別の行だと誤認し、36件を二重に数えていた(36件→72件) | 認証番号の重複が36件出た。区分をまたぐ重複は本来ありえないので検出できた |
②と③は、それでは見つかりません。「676件」も「344製品」も「235社」も、言われれば信じてしまう、もっともらしい数字だからです。区分別の内訳も自然に見えました。25%が消えていても、出てきた表は破綻していませんでした。
見つけられた唯一の方法は、抽出した行数を、生データ側から別の方法で数えた総数と突き合わせることでした。今回でいえば「HTMLの中に、認証番号そのものになっているセルはいくつあるか」を正規表現で単純に数え、抽出行数と比べる。これ1回で、②③④のすべてが検出できます。
全数調査を名乗るなら、「全部取れたことの証明」を別経路で用意する。それが今回いちばん高くついた学びです。01の手順8に組み込みました。
08OSSは見当たらなかった
私たちの関心は「オープンソースで電子帳簿保存法に対応できるか」でした。そこで897件にOSSと判別できる製品があるかを確認しました。
見当たりませんでした。ただし、次の限界があります。
とはいえ、構造的にそうなる理由があります。JIIMAは電子取引ソフト法的要件認証のFAQで、事務処理規程の備付けで対応するソフトについて「本認証の対象ではありません。電磁的記録の訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けで対応するソフトは、ユーザーの運用との組み合わせで法的要件を満たすことが必須となるので、ソフトウェア単体の機能では電子取引の要件を満たしていることが確認できないためです。」と明記しています。規程での対応を前提にするソフトウェアは、適法に運用できても認証を取ること自体ができません。この点は別記事の電帳法にOSSで対応できるのかで、費用まで含めて詳しく書きました。
09この数字をどう読むか
集計してみて、読み違えやすい点がはっきりしました。
- 「897本のソフトが認証されている」
- 「TKCが市場の17.9%を占めている」
- 「期限切れが放置されている」
- 「認証がないソフトは使えない」
- のべ897件。実質412製品
- TKCの161件は主製品11+派生150
- 期限超過21件は全て更新審査中(★)
- 認証は法律上の義務ではない
最後の点だけ補足します。JIIMA認証は電子帳簿保存法の要件ではありません。国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)は「保存義務者の予見可能性を向上させる観点から、JIIMAがソフトウェア等の法的要件認証制度を実施しています。」と説明しています。認証がないソフトウェアでも、要件を満たしていれば適法です。
認証の意味は「自分で要件を1つずつ確認しなくてよくなる」ことにあります。412製品という数字は、その手間を省ける選択肢がそれだけあるということであって、それ以外の選択肢が違法になるという意味ではありません。
データ・出典
- JIIMA「認証制度」(5つの認証制度と各制度の説明文)
- 認証製品一覧(いずれも2026年8月21日現在・2026-09-03取得):電帳法スキャナ保存ソフト(251件)/電子帳簿ソフト(171件)/電子取引ソフト(325件)/電子書類ソフト(114件)/デジタルシームレスソフト(36件)
- ★の意味=認証製品一覧の冒頭「認証有効期限欄に★が表示されているソフトにつきましては、更新審査の申請がなされており、認証有効期限以降も認証ソフトとして有効な製品です。」(原文ママ・5ページすべてに記載)
- 国税庁「JIIMA認証情報リスト」(区分の一覧。件数の記載はありません)
- JIIMA「電子取引ソフト法的要件認証制度」FAQ Q2(規程の備付けで対応するシステムが認証対象外である旨)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月・PDF)(「保存義務者の予見可能性を向上させる観点から…」の記載)
- 取得方法:各一覧ページを1ページ1リクエスト・3秒間隔・計5リクエストで取得。JIIMAの robots.txt は
/wp-admin/のみをDisallowとしており、/certification/は対象外であることを事前に確認しています