01法令に「JIIMA」は0回
まず、対象になる法令は2つです。
この2つをe-Gov法令検索のAPIで全文取得し、語を数えました。
| 語 | 法律 | 施行規則 |
|---|---|---|
| JIIMA | 0 | 0 |
| 日本文書情報マネジメント協会 | 0 | 0 |
| 公益社団法人 | 0 | 0 |
| 民間団体 | 0 | 0 |
| 第三者 | 0 | 0 |
| 認証 | 0 | 1 |
認証の取得を求める規定は存在しません。そもそも認証制度の運営主体である協会名が、法令のどこにも書かれていません。唯一ヒットした「認証」1件も、ソフトウェアの認証ではありませんでした。次で見ます。
02たった1つの「認証」はタイムスタンプ
施行規則に1回だけ出てくる「認証」は、第二条第六項第二号ロ(スキャナ保存)にあります。原文はこうです。
つまり「時刻認証業務」=タイムスタンプを提供する事業者の話であって、会計ソフトの認証ではありません。しかもこの認定を行うのは総務大臣です。
「電帳法には認証が必要と書いてある」と読める箇所は、この1か所しかなく、それは別のものを指しています。
03電子取引は4つから1つ選ぶ
では何が求められているのか。電子取引(メールやWebでやり取りした請求書などの電子データ)について、法律の条文はこれだけです。
中身は施行規則に委ねられています。その施行規則第四条第一項が、「次に掲げる措置のいずれかを行い」として4つを挙げています。「いずれか」です。全部ではありません。
| 号 | 内容(要約) | 誰が何をする |
|---|---|---|
| 一 | タイムスタンプが付された後に取引情報を授受する | 送ってくる相手側の運用に依存 |
| 二 | 授受後に自分でタイムスタンプを付す | 外部のタイムスタンプ事業者と契約 |
| 三 | 訂正・削除の事実と内容を確認できる、または訂正・削除ができないシステムを使う | ソフトウェアの機能 |
| 四 | 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理の規程を定め、それに沿って運用し、規程を備え付ける | 自分たちの運用だけ。ソフトの機能は不要 |
第四号の原文はこうです。
ソフトウェアについて一言も書かれていません。規程を作り、それに沿って運用し、規程を備え付ける。それだけです。
ここが、前回の記事で引用したJIIMAのFAQ「事務処理規程の備付けで対応するソフトは本認証の対象ではありません」と噛み合います。第四号を選ぶ運用は、ソフトの機能で要件を満たしていないので、そもそも認証の審査対象になりようがない——という関係です。
04ソフトの機能か、運用か
ただし、4つの措置とは別に、常に満たすべき要件があります。第四条第一項の柱書が、スキャナ保存等の条文を引いて指定しています。ここを混ぜて理解すると「やっぱりソフトが要る」と誤解します。
そこで、電子取引で求められるものを「ソフトの機能で満たすもの」と「運用・体制で満たすもの」に分けました。
| 要件 | 根拠 | ソフトの機能 | 運用・体制 |
|---|---|---|---|
| 措置 一号(相手がタイムスタンプ) | 規則4条1項一 | — | 取引相手の運用 |
| 措置 二号(自分でタイムスタンプ) | 規則4条1項二 | 外部サービス | 付与の運用 |
| 措置 三号(訂正・削除) | 規則4条1項三 | 必要 | — |
| 措置 四号(事務処理規程) | 規則4条1項四 | 不要 | 規程の策定・運用・備付け |
| 見読可能装置の備付け | 規則2条2項二 | — | PC・ディスプレイ・プリンタ等の備付け |
| 検索機能 | 規則2条6項五 | 必要(免除あり) | — |
| システムの概要書類 | 規則2条2項一イ | — | 書類の備付け(自社開発でなければ対象外) |
逆向きも成り立ちます。認証されたソフトを買っても、見読可能装置の備付けや、第四号を選ぶ場合の規程の策定・運用は、自分でやらなければなりません。認証はそこまで面倒を見てくれません。
※「自社開発でなければ対象外」は、第二条第二項第一号の柱書が「当該保存義務者が開発したプログラム以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除く」としていることによる読み方です。準用の効き方を含め、実務判断は税理士や所轄税務署にご確認ください。
05検索要件には3つの逃げ道がある
検索要件(第二条第六項第五号)は本来3つあります。イ取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を条件にできること。ロ日付・金額は範囲指定できること。ハ2以上の項目を組み合わせられること。
ところが第四条第一項の括弧書きが、段階的にこれを外していきます。
- 電磁的記録の提示・提出(ダウンロード)の求めに応じられるようにしている場合 → ロとハが外れる(範囲指定と組合せが不要になる)
- そのうえで基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者である場合 → 第五号がまるごと外れる
- または出力書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている場合 → 同じく第五号がまるごと外れる
売上5,000万円以下で、データを求められたら出せるようにしてあるなら、検索機能の要件は外れます。つまりこの場合、ソフトの機能として法令が求めるものは無くなります。
06満たせなかった場合の猶予
さらに、要件を満たせなかった場合の規定もあります(第四条第三項)。
「相当の理由」を税務署長が認め、データと出力書面を出せる状態にしてあれば、第一項の要件によらずに保存できると書かれています。ただしただし書きがあり、その理由が無かったとしたら要件に従って保存できなかったと認められるときは、この限りでないとされています。
07罰則はどこにあるか
「認証がないと罰せられるのか」という不安に対しては、認証の有無に対する罰則はありません。加算税の規定は法律第八条にあり、軽減が第4項、加重が第5項です。
- 財務省令で定める要件を満たす国税関係帳簿について
- 修正申告等があった場合の過少申告加算税を
- 税額の100分の5だけ控除
- ただし隠蔽・仮装があるときは適用しない
- スキャナ保存の電磁的記録、または電子取引の電磁的記録について
- 隠蔽・仮装された事実があった場合の重加算税に
- 税額の100分の10を加算
08では認証には何の意味があるのか
意味はあります。ただし「義務だから」ではありません。
国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)は、こう説明しています。
「予見可能性」——つまり、要件を自分で1つずつ確かめなくて済む、という価値です。本記事で見たとおり、条文は括弧書きと準用が入り組んでいて、正直に言って読みやすくはありません。それを他人が確認済みである、という状態にお金を払う仕組みだと理解するのが正確です。
- 「認証がないと電帳法に対応できない」
- 「認証ソフトを買えば対応は終わり」
- 「専用ソフトが無いと違法」
- 法令にJIIMAは0回。認証は要件ではない
- 認証は機能の話。規程・機器・書類は自分で用意する
- 措置四号を選べばソフトの機能は不要
私たちがこれを調べているのは、オープンソースのソフトウェアで電帳法に対応できるかを確かめるためでした。認証製品897件を数えたときOSSは見当たりませんでしたが、認証が要件でない以上、それは「OSSでは対応できない」ことを意味しません。費用まで含めた検討は電帳法にOSSで対応できるのかに書きました。
データ・出典
- 条文の取得:e-Gov法令検索の法令API(
/api/1/lawdata/)で、2026-09-04に取得。取得は2リクエストのみ・3秒間隔。文字化けが無いことを確認したうえで集計しています - 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)— 第七条(電子取引)、第八条第4項・第5項(加算税)
- 同法施行規則(平成十年大蔵省令第四十三号)— 第二条第二項(帳簿)、第二条第六項(スキャナ保存)、第四条第一項(電子取引の措置と要件)、第四条第二項(基準期間の定義)、第四条第三項(猶予)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月・PDF)—「保存義務者の予見可能性を向上させる観点から…」の記載
- JIIMA「電子取引ソフト法的要件認証制度」FAQ Q2 — 事務処理規程で対応するソフトが認証対象外である旨
- 語の出現回数は、取得したXMLからタグを除去した本文に対して数えたものです。附則を含みます。