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条文の一次確認

JIIMA認証は義務ではない

JIIMA認証を受けていないソフトを使って、問題ないのか」——これは私たちの記事に実際に届いている検索の質問です。
前回認証製品を全件数えたときは、国税庁の解説を根拠に「認証は要件ではない」と書きました。ただし法令本文までは確認しておらず、そう明記していました。
今回それを閉じます。電子帳簿保存法と施行規則を全文取得して読みました。結論から言うと、法令に「JIIMA」という語は一度も出てきません。

公開:2026-09-04読了:約11分条文取得日:2026-09-04
先に免責(重要)
本記事は税務・法務の助言ではありません。筆者は税理士でも法律家でもなく、e-Gov法令検索のAPIで取得した条文そのものを読んで整理した記録です。条文の解釈には専門的な判断が必要であり、本記事の読み方が正しいと保証するものではありません。個別の判断は、必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。法令は改正されます。本記事は2026年9月4日に取得した条文に基づきます。
条文を読んで分かったこと(2026年9月4日取得)
0法令に出てくる「JIIMA」法律・施行規則とも
4電子取引で選べる措置1つ満たせばよい
1ソフト不要の措置第四号=事務処理規程
5,000万円検索要件が外れる売上基準期間の売上高

01法令に「JIIMA」は0回

まず、対象になる法令は2つです。

法律
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(いわゆる電子帳簿保存法)。本則は第一条から第八条まで
施行規則
同法施行規則。本則は第一条から第五条まで。実際の保存要件はここに書かれている

この2つをe-Gov法令検索のAPIで全文取得し、語を数えました。

法令本文に含まれる語の出現回数(2026-09-04取得・タグを除いた本文)
法律施行規則
JIIMA00
日本文書情報マネジメント協会00
公益社団法人00
民間団体00
第三者00
認証01

認証の取得を求める規定は存在しません。そもそも認証制度の運営主体である協会名が、法令のどこにも書かれていません。唯一ヒットした「認証」1件も、ソフトウェアの認証ではありませんでした。次で見ます。

02たった1つの「認証」はタイムスタンプ

施行規則に1回だけ出てくる「認証」は、第二条第六項第二号ロ(スキャナ保存)にあります。原文はこうです。

施行規則 第二条第六項第二号ロ(抜粋・原文ママ)
「当該国税関係書類の作成又は受領後、速やかに一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に総務大臣が認定する時刻認証業務(電磁的記録に記録された情報にタイムスタンプを付与する役務を提供する業務をいう。)に係るタイムスタンプ(…)を付すこと」

つまり「時刻認証業務」=タイムスタンプを提供する事業者の話であって、会計ソフトの認証ではありません。しかもこの認定を行うのは総務大臣です。

「電帳法には認証が必要と書いてある」と読める箇所は、この1か所しかなく、それは別のものを指しています。

03電子取引は4つから1つ選ぶ

では何が求められているのか。電子取引(メールやWebでやり取りした請求書などの電子データ)について、法律の条文はこれだけです。

法律 第七条(全文)
「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」

中身は施行規則に委ねられています。その施行規則第四条第一項が、「次に掲げる措置のいずれかを行い」として4つを挙げています。「いずれか」です。全部ではありません。

電子取引で選べる4つの措置(施行規則第四条第一項)
内容(要約)誰が何をする
タイムスタンプが付された後に取引情報を授受する送ってくる相手側の運用に依存
授受後に自分でタイムスタンプを付す外部のタイムスタンプ事業者と契約
訂正・削除の事実と内容を確認できる、または訂正・削除ができないシステムを使うソフトウェアの機能
正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理の規程を定め、それに沿って運用し、規程を備え付ける自分たちの運用だけ。ソフトの機能は不要

第四号の原文はこうです。

施行規則 第四条第一項第四号(全文・原文ママ)
「当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。」

ソフトウェアについて一言も書かれていません。規程を作り、それに沿って運用し、規程を備え付ける。それだけです。

ここが、前回の記事で引用したJIIMAのFAQ「事務処理規程の備付けで対応するソフトは本認証の対象ではありません」と噛み合います。第四号を選ぶ運用は、ソフトの機能で要件を満たしていないので、そもそも認証の審査対象になりようがない——という関係です。

04ソフトの機能か、運用か

ただし、4つの措置とは別に、常に満たすべき要件があります。第四条第一項の柱書が、スキャナ保存等の条文を引いて指定しています。ここを混ぜて理解すると「やっぱりソフトが要る」と誤解します。

そこで、電子取引で求められるものを「ソフトの機能で満たすもの」と「運用・体制で満たすもの」に分けました。

電子取引の保存要件を「機能」と「運用」に分けた(筆者による分類)
要件根拠ソフトの機能運用・体制
措置 一号(相手がタイムスタンプ)規則4条1項一取引相手の運用
措置 二号(自分でタイムスタンプ)規則4条1項二外部サービス付与の運用
措置 三号(訂正・削除)規則4条1項三必要
措置 四号(事務処理規程)規則4条1項四不要規程の策定・運用・備付け
見読可能装置の備付け規則2条2項二PC・ディスプレイ・プリンタ等の備付け
検索機能規則2条6項五必要(免除あり)
システムの概要書類規則2条2項一イ書類の備付け(自社開発でなければ対象外)
ここが本記事の要点
措置は第四号(事務処理規程)を選べば、ソフトウェアの機能は要りません。そのうえでソフトの機能が必須なのは「検索機能」だけです。そしてその検索機能にも、次で見るとおり免除の道があります。

逆向きも成り立ちます。認証されたソフトを買っても、見読可能装置の備付けや、第四号を選ぶ場合の規程の策定・運用は、自分でやらなければなりません。認証はそこまで面倒を見てくれません。

※「自社開発でなければ対象外」は、第二条第二項第一号の柱書が「当該保存義務者が開発したプログラム以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除く」としていることによる読み方です。準用の効き方を含め、実務判断は税理士や所轄税務署にご確認ください。

05検索要件には3つの逃げ道がある

検索要件(第二条第六項第五号)は本来3つあります。取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を条件にできること。日付・金額は範囲指定できること。2以上の項目を組み合わせられること。

ところが第四条第一項の括弧書きが、段階的にこれを外していきます。

検索要件が外れていく条件(施行規則第四条第一項の括弧書き)
  1. 電磁的記録の提示・提出(ダウンロード)の求めに応じられるようにしている場合ロとハが外れる(範囲指定と組合せが不要になる)
  2. そのうえで基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者である場合第五号がまるごと外れる
  3. または出力書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている場合 → 同じく第五号がまるごと外れる
2と3は「電磁的記録の提示等の要求に応じることができるようにしているとき」が前提です。なお「基準期間」は、個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度と定義されています(第四条第二項第三号)。

売上5,000万円以下で、データを求められたら出せるようにしてあるなら、検索機能の要件は外れます。つまりこの場合、ソフトの機能として法令が求めるものは無くなります。

06満たせなかった場合の猶予

さらに、要件を満たせなかった場合の規定もあります(第四条第三項)。

施行規則 第四条第三項(抜粋・原文ママ)
「…又は納税地等の所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。」

「相当の理由」を税務署長が認め、データと出力書面を出せる状態にしてあれば、第一項の要件によらずに保存できると書かれています。ただしただし書きがあり、その理由が無かったとしたら要件に従って保存できなかったと認められるときは、この限りでないとされています。

07罰則はどこにあるか

「認証がないと罰せられるのか」という不安に対しては、認証の有無に対する罰則はありません。加算税の規定は法律第八条にあり、軽減が第4項、加重が第5項です。

法律第八条の加算税(数値は条文の「百分の◯」をそのまま記載)
第4項:軽減(アメ)
  • 財務省令で定める要件を満たす国税関係帳簿について
  • 修正申告等があった場合の過少申告加算税
  • 税額の100分の5だけ控除
  • ただし隠蔽・仮装があるときは適用しない
第5項:加重(ムチ)
  • スキャナ保存の電磁的記録、または電子取引の電磁的記録について
  • 隠蔽・仮装された事実があった場合の重加算税
  • 税額の100分の10を加算
どちらも「認証を受けているか」ではなく「要件を満たしているか」「隠蔽・仮装があったか」で決まります。認証は条件に入っていません。

08では認証には何の意味があるのか

意味はあります。ただし「義務だから」ではありません。

国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)は、こう説明しています。

国税庁の説明(原文ママ)
保存義務者の予見可能性を向上させる観点から、JIIMAがソフトウェア等の法的要件認証制度を実施しています。」

「予見可能性」——つまり、要件を自分で1つずつ確かめなくて済む、という価値です。本記事で見たとおり、条文は括弧書きと準用が入り組んでいて、正直に言って読みやすくはありません。それを他人が確認済みである、という状態にお金を払う仕組みだと理解するのが正確です。

この記事の結論
よくある理解
  • 「認証がないと電帳法に対応できない」
  • 「認証ソフトを買えば対応は終わり」
  • 「専用ソフトが無いと違法」
条文を読んだ結果
  • 法令にJIIMAは0回。認証は要件ではない
  • 認証は機能の話。規程・機器・書類は自分で用意する
  • 措置四号を選べばソフトの機能は不要

私たちがこれを調べているのは、オープンソースのソフトウェアで電帳法に対応できるかを確かめるためでした。認証製品897件を数えたときOSSは見当たりませんでしたが、認証が要件でない以上、それは「OSSでは対応できない」ことを意味しません。費用まで含めた検討は電帳法にOSSで対応できるのかに書きました。

最後にもう一度
本記事は条文を読んだ記録であって、税務・法務の助言ではありません。とくに「ソフトの機能か運用か」の分類は筆者による整理であり、条文にそう書かれているわけではありません。準用や括弧書きの効き方は解釈が分かれ得ます。実際の判断は顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。数字と条文番号は本記事の出典欄から原文にあたれます。

データ・出典

  1. 条文の取得e-Gov法令検索の法令API(/api/1/lawdata/)で、2026-09-04に取得。取得は2リクエストのみ・3秒間隔。文字化けが無いことを確認したうえで集計しています
  2. 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)— 第七条(電子取引)、第八条第4項・第5項(加算税)
  3. 同法施行規則(平成十年大蔵省令第四十三号)— 第二条第二項(帳簿)、第二条第六項(スキャナ保存)、第四条第一項(電子取引の措置と要件)、第四条第二項(基準期間の定義)、第四条第三項(猶予)
  4. 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月・PDF)—「保存義務者の予見可能性を向上させる観点から…」の記載
  5. JIIMA「電子取引ソフト法的要件認証制度」FAQ Q2 — 事務処理規程で対応するソフトが認証対象外である旨
  6. 語の出現回数は、取得したXMLからタグを除去した本文に対して数えたものです。附則を含みます。
本記事は税務・法務に関する助言ではありません。筆者は税理士・法律家ではありません。条文は2026年9月4日時点で取得したものであり、法令改正により内容は変わります。「ソフトの機能か運用か」の分類、および「自社開発でなければシステム概要書類は対象外」という読み方は、いずれも筆者による条文の整理であって、法令にその分類が書かれているわけではありません。準用規定・括弧書きの適用関係については解釈が分かれ得ます。本記事は特定の製品・事業者・認証制度の優劣を評価するものではありません。JIIMA認証には「要件を自分で確認する手間を省ける」という価値があり、本記事はそれを否定するものではありません。個別の判断は必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。